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コラボレーション

林志保(はやし・しほ)
兵庫県出身。京都市立芸術大学工芸科漆工専攻卒。ジュエリーデザイン職を経て、多治見市陶磁器意匠研究所にてやきものの知識と技術を学ぶ。2014年、同研究所を卒業し、多治見市を拠点に陶芸家として活動をスタート。

岐阜県多治見市で陶芸家として活躍している林志保さん。自然界を思わせる有機的な曲面の作品が、感度の高い人々の間で注目を集めています。今回は「どう ザ パフューム」の陶器アートピースキャップを担当。丁寧な手仕事により作られたキャップは一つひとつニュアンスが異なり、「どう ザ パフューム」の世界観にさらなる洗練をもたらしてくれています。そんな林さんに、ご自身のこれまでの歩みや作品に対する思いについて伺いました。

 素材に触れて、一からものをつくりたい

子どもの頃から工作が好きで、高校に入ってから大学は美大に行こうと決めました。高校卒業後は京都市立芸術大学に進み、漆工を専攻。漆の持つ塗膜の艶やかさに魅了され、曲面を意識した作品を制作していました。ただ、将来的に漆工で生計を立てていくことがあまり想像できず、作家になることは考えていませんでした。その頃はまだ今のようにクラフト市やショップなど、作品を気軽に発表できる場が少なかったこともあり。 大学卒業後は、興味のあったジュエリーデザインの会社に就職し、企画デザインの仕事をしていましたが、自分の表現ができないことへのフラストレーションが溜まり、退社。「私は素材に直接触れて、自分の手で一からものをつくりたい」と決意し、岐阜県の多治見市陶磁器意匠研究所に研究生として入り、やきものを学ぶことにしたのです。 陶芸をしたいと思ったのは、陶器市に足を運んでみたのがきっかけで、いろいろな陶器が大量に並んでいたのですが、欲しいと思うものがあまりなかったんです。だったら自分で作ってみようかな、っていう、最初は軽い気持ちでした(笑)。 研究所では2年間陶芸の基礎などを学び、その後、作家として活動し始めて今年で9年目になります。

 無作為と作為のバランスを調整しながら

作品づくりのなかで面白いなと思うのは、可塑性に優れている土だからこそ偶発的に新しい形を生み出せるところや、焼成によって本当にたくさんの表情を見せてくれるところです。 私の作品は組み合わせることによってできているものが多いのですが、その行為が、自分が想定していなかった新しいかたちを生み出すことに面白さを感じています。土は石や木と比べ、足すことも引くことも容易で、組み合わせるという行為と相性がとてもいいんです。ときには失敗による偶然の発見がさらにアイデアを生み、新しい作品のきっかけになったりもします。 ここ数年作っている作品は、石からかたちのきっかけをもらっています。大小さまざまな石をいくつか並べ、その上に粘土の板を被せるんです。すると、粘土の板が丘陵であったり、水の波のような起伏を起こし、美しい揺らぎができます。それを筒状に丸めて中が空洞の立体の状態にしてから、さらに土を足したり引いたりして、形をつくっていきます。土の水分量によって曲面のニュアンスが変わるので、そうやって変容していくものに身を委ねて、無作為と作為のバランスを調整しながら作品をつくっています。作為のないものの美しさに叶うものはありませんが、素材からきっかけをもらい、自身が美しい、新しいと感じるものを作ることができればいいなと思います。

 美しいと感じる曲面や曲線

どうのファウンダーの松尾美里さんとは同世代で、以前から知り合いだったのですが、どうを立ち上げたときは、彼女の人柄と信念がどうというブランドに体現されていることに感銘を受けました。ものづくりへのこだわりも強いですし、何を美しいと感じるかという感覚は、お互いに共通するところがあると思っています。ですので、今回のコラボレーションの機会をいただき、とてもうれしく思いました。
実際の制作は初めてトライすることも多く、試行錯誤の連続でした。6センチ四方という小さな作品のなかに、どうというブランドの魅力とわたしらしさをどのように着地させるのか、打ち合わせを重ね、最終的にブランドイメージにあったものができたと思っています。
わたしの作品は丸みのあるものがほとんどですが、具体的なモチーフはありません。自然と触れ合うなかで感じたものが、自分が生み出す有機的な線や面に表れているような気がします。自然を感じることはわたしにとって大切で、制作の合間に美しい自然に触れに出かけることが、息抜きと同時にインスピレーションを得る機会になっています。わたしの作品が、どこか自然界がもたらす美や癒しに似たものを醸し出しているとしたら、それはおそらくわたし自身が暮らしのなかにそういったものを求めているのでしょう。今回の「どう ザ パフューム」の陶器アートピースキャップは、暮らしのなかでふとした心地よさを味わわせてくれるものであってほしいと願っています。